膝痛とは
膝関節痛を含む膝痛は、様々な原因によって生じ、現れる症状も多岐に渡ります。歩行時の痛み、階段昇降時の痛み、就寝中の痛みなど痛みを起こすシチュエーションも違い、内側や外側など痛みの生じる部位も変わります。
膝痛の原因となる整形外科疾患も種類が多く、代謝性・リウマチ性、腫瘍性、外傷性と変性などがあり、必要な検査で原因を特定することで適切な治療が可能になります。
当院ではX線検査で異常が発見できないケースでも、長年の経験で培った専門性の高い診察によって隠れた微細な異常を発見して、効果的な治療につなげています。
膝痛は日常生活に大きな支障を及ぼす症状であり、進行することで歩行困難の原因になる可能性があります。悪化させないためには早期の治療がとても重要です。気になる膝の痛みや違和感がありましたら、気軽にご相談ください。
膝の構造
膝関節は、太ももの骨である大腿骨、すねの骨である脛骨、膝のお皿と呼ばれる膝蓋骨という3つの骨で構成されており、前十字靱帯・後十字靱帯、外側側副靱帯、内側側副靱帯で支えられています。骨の表面は軟骨で覆われており、骨の間にはクッションの役割を果たす半月板という軟骨組織があります。膝は立つ・歩く・走るといった動作で可動性と支持性という役割を果たしていることから負担が大きく、加齢や怪我でのトラブルが起こりやすい部位です。
膝痛の原因となる主な病気
変形性膝関節症
骨を守っている軟骨が摩耗してしまい、膝関節が変形して痛みを起こす疾患です。膝関節痛の主な原因になっており、女性の発症が多く、加齢によって発症頻度が上昇します。初期には、立ち上がる・歩き始めるといった際に一時的な痛みが起こり、短時間に治まります。進行すると階段昇降や正座が困難になり、末期には膝を完全に伸ばせなくなって歩行困難になる可能性もあります。早期には無症状のことも多く、強い痛みに気付いた時にはすでにかなり進行しているケースもよくあります。早期に治療を開始することで効果的な進行防止が可能になり、日常への影響を最小限に抑えられる可能性が高くなります。膝に少しでも違和感がありましたら早めに受診してください。
膝痛で長くお悩みになっている場合もご相談ください。
関節リウマチ
主に手足の指の関節に炎症を起こし、こわばり、腫れ、変形などを生じる自己免疫疾患です。全身性疾患であり、手足の指、肩、肘、膝、股関節、足首など様々な場所に症状を起こします。発症初期には、起床時の手指関節のこわばり、微熱、全身倦怠感、食欲不振が生じ、進行すると関節内に水がたまる、骨や軟骨の破壊などを起こし、可動域が大きく制限されて日常生活に深刻な支障を及ぼします。30~40代の女性の発症が多い傾向がありますが、はっきりした原因は分かっていません。現在は進行を止める効果的な治療が可能になっていますので、早期発見が重要です。朝起きた時に手指がこわばる、全身倦怠感、微熱などの症状に気付いたら、できるだけ早くご相談ください。
半月板損傷
半月板は膝関節の内側と外側にあって、クッションの役割を果たしている軟骨組織です。他の関節は筋肉によって骨同士がつながっていますが、膝関節では靱帯や腱、半月板などの軟部組織が骨を結びつけて安定させています。半月板損傷は怪我や加齢で起こりやすい疾患です。加齢によって半月板は徐々に摩耗しますが、摩耗して痛みを生じるのではなく、摩耗によって筋肉が収縮し、それによって炎症を起こして痛みにつながります。
半月板損傷の主な症状は、膝の曲げ伸ばしの際の痛み、関節が正常に動かなくなるなどです。他にも動かした際の異音、歩行中に膝が不安定になる、動かした際に引っ掛かるように感じるなど、様々な症状があります。治療では、薬物療法、物理療法や運動療法などをしっかり行って痛みを軽減し、可動域を改善します。状態によっては手術が必要になる場合もあります。
オスグッド・シュラッター病
膝のお皿のすぐ下が腫れ、痛みを起こしている状態で、スポーツに熱中しているお子さまに多い疾患です。すねの骨である脛骨の上部の脛骨粗面周辺に生じます。お子さまの骨には成長骨端線があり、この部分に大きな負荷がかかると骨端部の成長が阻害されて痛みや変形などを起こします。初期には痛みがそれほど強くないことから、無理をして悪化させてしまうケースもあります。放置してしまうと成人後にも痛みが残ることがあり、早めに適切な治療を受けることが重要です。
オスグッド・シュラッター病は、膝に加え、体幹や下半身全体が大きく関与して発症しているケースがあり、全身バランスのとれた筋力や柔軟性がより早い痛みの解消と再発防止には不可欠です。当院では適切なリハビリテーションで動きの問題なども含めたトータルな調整を行っています。
膝痛は根治できない?
膝痛は治らないと諦めている方もいますが、適切な検査を行って正確に診断し、原因に合わせた治療を行うことで比較的短期間に症状の改善が期待できます。重要なのは、患者様一人ひとりの状態を正確に把握し、原因を明確にした上で必要な治療を行うことです。
一般的な膝痛の診察と治療では、膝関節の障害と一括りにして、痛み止め・マッサージ・電気療法、ヒアルロン酸注射を行っているケースがよくあります。例えば、変形膝関節症の治療を長く受けていた方が当院を受診し、診察やMRI検査で精密に調べると膝関節の外にある神経や腱に原因が発見されることがあります。変形膝関節症では関節内の治療を行いますので、関節外にある腱や神経への治療がされておらず、それでは症状の改善は見込めません。原因である関節外の神経や腱へのピンポイントな治療を行うことで、症状改善の高い効果を得られます。長く治療を受けても膝痛が改善しない場合、原因が明確になっていない可能性があります。患者様の状態は個人差が大きく、それぞれの原因を明確にするためには時間のかかる個別対応が必要であり、保険制度の問題もあって多くの医療機関が実施できていませんが、当院では患者様の状態にきめ細かく合わせた個別の治療が可能です。
膝痛は膝以外の部分も
関与しています
膝痛の原因は、膝関節だけにあるのではなく、ほとんどの場合は、腰や骨盤、足首をはじめとした全身のバランスや姿勢、動作の癖などが大きく関与して発症・悪化しています。人間は直立歩行をしますので、重い頭部を支えるために様々な部位に大きな負担がかかっており、特に立つ・歩く・走る動作では膝に大きな負担がかかります。筋肉の緊張や偏った使われ方などが生じると膝への負担が増し、膝の痛みやしびれなどを起こします。こうして生じた膝痛を解消するためには、筋肉をゆるめることが重要になります。
当院では、膝の状態に加え、強く関与する腰・足関節、足部などを丁寧にチェックし、姿勢や歩行などを観察して全体のバランスもしっかり確認して、膝の痛みが起こる原因を判断し、患者様にわかりやすくご説明して治療計画を患者様と相談しながら立てていきます。膝痛に関与している他の筋肉のかたさや機能不全がある場合には、解消できる治療やリハビリテーションもご提案しています。患者様が納得された治療方針が決まってから治療をスタートさせていますので、気になることがありましたら些細なことでも遠慮せずにご質問ください。初診の際には特にしっかり時間をとって対応していますので、安心してご相談ください。
診断
問診と触診で状態を確認し、その上で必要な検査を行っています。また、膝関節以外の部位が膝痛に関与しているケースも多いので、腰・股関節・足などもチェックしています。
X線検査
骨の状態を詳細に観察できる検査です。ただし、半月板損傷や初期の変形性膝関節症の発見は困難です。
MRI検査
X線検査ではうつらない、軟部組織の状態確認ができます。変形性膝関節症や半月板損傷などの正確な診断には欠かせない検査です。
治療
薬物療法、物理療法、運動療法などから、患者様の状態にきめ細かく合わせた治療を行っています。
患者様によって治療内容が大きく変わり、状態が変化したらそれに合わせて治療内容も変化します。手術をはじめとした高度医療をご希望される方には連携している高度医療機関をご紹介しています。また、治療が終わってからのアフターケアやフォローが必要な場合にも当院で対応しています。
膝痛は軽い痛みや違和感の段階で治療を開始することが重要です。日常生活に大きな支障を及ぼさないためにも、痛みを繰り返し起こす場合には早めにご相談ください。
よくある質問
膝が痛い時、
何をしたらいいですか?
膝の痛みが発生した場合、まずは安静を保ち、適切な対処を行うことが重要です。
膝の痛みや腫れ、熱が伴う場合は、症状が悪化する前にしっかりとケアしましょう。
膝の痛みに対する効果的な対処法
安静にする
膝を過度に使用せず、休ませることが大切です。
腫れや熱がある場合は冷やす
膝に腫れや熱感がある場合は、氷や冷却パッドで冷やし、炎症を抑えましょう。
痛みが落ち着いたら温める
炎症が引いた後は、膝を温めることで血行を促進し、回復をサポートします。
湿布や市販の鎮痛剤を使用する
市販の湿布や鎮痛剤を使うことで、膝の痛みを和らげることができます。
膝関節の周りの筋肉をストレッチする
膝関節の周囲の筋肉をストレッチして、柔軟性を高め、痛みの予防に役立てましょう。
膝サポーターを装着する
膝サポーターを使用して、膝の安定性を確保し、負担を減らすことができます。
膝の痛みが続く場合の受診の目安
膝の痛みが長期間続く、またはひどくなって歩けない場合は、整形外科を受診することをおすすめします。特に、膝の痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合は、事前に医療機関に問い合わせをし、入院や救急対応ができる病院に行くことが重要です。 また、膝の痛みが関節リウマチに関連している可能性がある場合は、整形外科ではなく、リウマチ科や膠原病科を受診する方が適切です。
膝が痛いのは何が原因ですか?
膝の痛みにはさまざまな原因があり、それぞれに適切な治療が必要です。
膝の痛みが続く場合は、早期に整形外科を受診し、正確な診断を受けることが重要です。膝の痛みの原因としては、次のような病状が考えられます。
膝の痛みの主な原因
膝の痛みが続く原因は様々であり、早期に整形外科での診断を受けることが大切です。
- 怪我(靱帯損傷、骨折、軟骨損傷など)
- 変形性膝関節症などの関節炎
- 関節リウマチなどの自己免疫疾患
- 痛風などの内科的疾患
- ベーカー嚢腫などの滑液包炎
- 乾癬性関節炎などの軟部組織の炎症
- 強直性脊椎炎などの脊椎に近い関節の炎症
原因別の膝の痛みの症状
変形性膝関節症
年齢とともに膝の痛みが徐々に強くなるのが特徴です。
関節リウマチ
自己免疫機能の過剰反応により、膝関節が攻撃され痛みを引き起こします。
痛風
体内の尿酸が過剰になり、関節に結晶化して激しい痛みと炎症を引き起こします。
ベーカー嚢腫
膝関節液の過剰分泌によって、滑液包に液体が溜まり、膝に痛みを生じさせます。
膝の痛みの予防と改善法
膝の痛みを予防し、改善するためには、次のような生活習慣の改善が重要です。
早期に対処することで予防できることが多いですが、痛みが続く場合や症状が悪化する場合は、整形外科を受診し、専門医による適切な診断と治療を受けましょう。
体重管理
膝に過剰な負担をかけないために、体重を増やさないように心がけましょう。
姿勢改善
O脚や悪い姿勢を改善することで、膝への負担を軽減できます。
足元のケア
外反母趾や偏平足を改善することで、膝にかかる力を分散し、痛みの予防につながります。
膝の痛みが何日続いたら病院?
膝の痛みが1週間以上続く場合は、早急に整形外科を受診しましょう。膝の痛みが長期間続くことは、さまざまな病状のサインである可能性があります。
膝の痛みの原因として、以下のような疾患が考えられます。
膝の痛みの主な原因
- 膝の外傷(スポーツ障害、事故などによる打撲や捻挫)
- 変形性膝関節症(膝関節の軟骨がすり減ることによる痛み)
- 靱帯の断裂(膝を支える靱帯が切れることによる痛み)
- 軟骨のすり減り(膝の関節軟骨が摩耗することによる痛み)
膝の痛みが長引くと、関節軟骨がさらに摩耗し、半月板が損傷する可能性があります。
これにより、膝の機能が悪化し、最終的には変形性膝関節症に進行することもあります。
膝の痛みが続く場合の対処法
膝の痛みが続く場合、無理に動かすことは避け、以下のような対処を行いましょう。
安静を保つ
無理に膝を使わず、安静を心がけましょう。
痛みを引き起こす動作を避ける
膝に負担をかける動作(正座や和式トイレの使用など)を避け、洋式の生活に切り替えましょう。
膝の負担を軽減する生活環境を整える
ベッドや椅子など、膝に負担をかけない生活を心がけましょう。
膝の痛みを無視せず、
早期に整形外科を受診
膝の痛みが長引くと、症状が悪化し、日常生活に支障をきたすこともあります。
痛みが続く場合は、早期に整形外科を受診して、正確な診断と適切な治療を受けることが重要です。
膝の痛みは自然に治りますか?
膝の痛みは自然に治ることはほとんどなく、放置すると症状が悪化する可能性があります。
膝の痛みの原因は様々で、変形性膝関節症や滑膜炎などが挙げられます。
早期に適切な治療を開始することで、症状の進行を防ぎ、予後を改善することができます。
変形性膝関節症
軟骨がすり減ることが原因
変形性膝関節症は、膝の軟骨が摩耗し、膝関節の骨と骨のすき間が狭くなる疾患です。
自然治癒は望めない
症状を放置すると進行するため、早期治療が重要です。
早期に治療を始めることで
予後が改善される
膝関節の動きを保つために、早期の治療が非常に重要です。
滑膜炎
関節液が過剰に分泌される
滑膜炎は膝関節内の滑膜に炎症が生じ、関節液が多量に分泌されて膝に水がたまる病気です。
炎症が治まらない限り自然治癒しない
症状が改善しない場合、炎症を抑える治療が必要です。
関節液の分泌と吸収の
バランスを正常に戻す
治療を行うことで、膝関節の正常な機能を回復させます。
膝の痛みを改善する方法
適度な運動
膝に負担をかけない範囲での運動が、関節の可動域を保ちます。
体重のコントロール
体重を適切に管理することで、膝への負担を軽減できます。
筋トレやストレッチ
膝の周りの筋肉を強化し、関節を支える力を高めます。
湿布や市販の鎮痛剤
痛みを和らげるために、湿布や鎮痛剤を使用することができます。
注意点
膝が赤く腫れていたり、安静にしていても痛みが続く場合は、無理に動かさずに早急に医師に相談することが重要です。
これらの症状が続くと、早期の診断と治療が必要です。